リーダーは、組織から支持されなければ、リーダーたり得ません。リーダーは自分の主張を持ち、ビジョンを語りますが、それに共感して後に続こうとする人を必要としています。このリーダーの後に続こうとする人はフォロワーと呼ばれますが、その関係は信頼を基礎としています。フォロワーから信頼されるリーダーとは、すなわちブレない存在です。自分の主張をコロコロ変えたり、日和見主義的な部分が見え隠れするようであれば、フォロワーはたちまちあっさりとリーダーを見限ってしまいます。
強烈な個性と壮大なビジョンは、聴衆を一時的に熱狂させるのには十分でしょうが、それを実現できる、実現したいと思わせる要素が無ければ、効果が持続しないのです。変革にはそれまでの積もり積もった矛盾が一気に噴き出すなど、簡単には対処できない問題が山積しています。それを一つ一つ解決するためには、降りかかるどんな困難にも挫けることなく、フォロワーも含めて組織に属する一人一人が成長を遂げながら、状況を好転させてチャンスを待つだけの粘り強さも必要なのです。
このようなフォロワーとリーダーとの信頼関係の基礎は、ブレないリーダーが持っている主張や行動の一貫性です。平穏無事な時代において、一貫性を実現するために前例踏襲を重ねることは誰にでもできます。しかし何もかもが不確実で、誰もが将来に不安を抱えているような時代には、何もしないのが最大のリスクと気が付いていながらも、一歩を踏み出すのに躊躇するものです。そこで導き手としてのリーダーの出番となるわけですが、威勢のいい言葉を並べ立てるだけでは、乗り出した拍子に梯子を外されるのではないかと、フォロワーがお互いに疑心暗鬼になってしまうだけです。
逆にリーダーがどんな時にも一貫した態度を示すのであれば、フォロワーに落ち着きを与え、その能力を引き出してくれるのです。またその態度が、下の者には厳しく、上の者には媚びへつらうといったように、相手に応じて変わるようでは、やはりフォロワーの信頼を勝ち取ることができません。あるいはリーダーには感情に振り回されることなく、時にははったりであっても冷静沈着な印象を周囲に与える必要がある場合もあります。もちろんわざと感情を露わにして見せることも、戦略であれば有効ですが、少なくともフォロワーがリーダーの顔色ばかりを窺うようなことのないように、どんな状況下に置かれても、淡々とした態度を保つことも大切なのです。このように信頼を生む一貫性には、時間的な一貫性もあれば、関係的な一貫性もあれば、状況的な一貫性もあるのです。